和光学園報「創立91周年記念特別号」に寄せた文章をこちらに転載します。 9月に和光小学校へ卒業生が来て語る機会がありました。彼女は幼稚園から高校まで和光学園で過ごし、今は大学生です。小学校や高校の頃の思い出を色々な角度から話してくれましたが、小学校では沖縄学習旅行が一番印象に残っているそうです。小学校の時は「基地反対」の考えだったが、高校の授業の中で抑止力という考え方を知ってもやもやしたこと、その後、改めて基地をもつことは平和を遠ざけているのではないかと考えるようになった、6年生の時の学びがあったからここまで辿り着けたと語っていました。 彼女の話の中で特に心に残ったことが二つあります。一つは、「討論がおもしろかった」と言っていたことです。自分と反対の意見を聞くと「理解できないな」と思うこともあるけれど、ある部分はそうだよなと納得できたり、それで自分の意見が変わっていくことがおもしろいと言っていました。幼稚園から小学校、中学校、高校・・・と、相手を論破する討論ではなく、違うところも認めながら対話を基にした討論を積み重ねてきたことが伺えました。もう一つは、彼女が色々な角度で話すエピソードが「常に葛藤している」ということです。「無知は楽」と彼女は言います。高校の授業で学んだ「ファストファッションやアイスクリームが途上国の児童労働と繋がっていること」等を知ることで、知らなければ何も感じないで生活できるのに、知ることでそれでも安くて買ってしまう自分と葛藤し続けていました。一方で、知らないって怖いとも言っていました。誰かの不幸の上に成り立っていていいのかな、と。和光の授業の中で、白とも黒ともつかない問いをたくさん与えられて、今も葛藤し続けていました。和光の授業を通して物事を追求すること、考え続けることを教わったとも言っていました。 彼女の話を聞きながら、和光が目の前の子どもから、生活や現実社会から出発した教育づくりをしていることの重要性を感じました。社会はまさしく簡単には答えの出ないことの連続です。しかし、答えが出ないからといって考えるのをやめてしまうのではなく、考え続けること、そのことが社会を創っていくことになります。 幼稚園児だった時の彼女を思い出しながら、こんな素敵な大人に育っている姿をみて、私は和光学園の教育の確信を得ることができました。そして、それがまた和光教育の